明かるいナショナル、キンカンぬって、3時のおやつは文明堂
以下はお年がばれるほど前にしたためたハノイ事情です。今ではかなり変わってきているでしょう。
番組のいいところで飛び込んでくるコマーシャルが煩わしくて、日本ではあまり民放テレビを見ない方でした。従ってはやりのコマーシャルにはとんと疎いのですが、それでも印象としては柔らかく、軟らかく、あくまでもソフトタッチ。コマーシャル全体を通じて静謐なあるいは軽快な音楽をバックに優美な映像がホワーンと流れていきます。しかし何の広告かわからない。
かなり前、「オー、モーレツ!」なんていうのがありましたが、あのころから次第にイメージ作戦が進んできたような気がします。今では商品名あるいは会社名をがなりたてるのは「ッコージマッ!」などとやっている某社ぐらいなものではないですか?つまりコマーシャルの多くは画面のこちら側に想像させよう、その感性に訴えて、思い出させて広告主を定着させようというものが多いのではないでしょうか。その意味では視聴者は受け取るのではなくて、こちらの主体性により受け取らされているのです。(意味不明?ここらへんまったくの独断です。)
ハノイでは4つの放送番組を見ることができます。国営のベトナムテレビ第1、第2、第3チャンネル、それから市営のハノイテレビが早朝から深夜まで流しています。べトナムテレビ第1は政治、社会、ニュースなど、第2は教育、第3が音楽や演劇などの娯楽中心で、ハノイテレビは当然ハノイ市関連となっています。こちらのテレビ放送は1970年に始まり、しばらく白黒だけでしたが、10年ほど前からカラー放送が見られるようになったそうです。もちろん今ではすべてカラーです。ある日のゴールデンタイムのベトナムテレビ放送番組を紹介しますと、第1が19:00ニュース、20:15行政改革、20:45バー川の環境汚染。第2が16:00動物の世界、17:00農家の友・花卉栽培技術紹介、19:30チュニジアの民族文化。そして第3が16:00サッカー中継、18:00外国映画、20:00中部地方の歌と踊りなどと割とカタイ内容になっています。
私はまだベトナム語が不十分で放送をほとんど理解できません。しかし画面を見る限り、何かタイムカプセルに乗って、ン十年前までさかのぼった青春時代のころの様子を呈しています。日本の場合ですと、何と言うんでしょうか、手術台の上の照明のように影を作らない光が多用されているようですが、こちらでは光と影のコントラストがくっきりしています。また、カラーといっても原色が強く、かつて「総天然色」とか言ってましたよね。そんな趣きです。こうした画像を見ていますと、私なんぞは高倉健と藤純子の任侠シリーズや初期の寅さん映画、果てはセピアに霞んだ大昔のメンコ絵までもが思い出されて、しばし懐かしさいっぱい。心なしかバックミュージックもゆらゆら揺れて聞こえてくるような。そして、そう、コマーシャルがまた実に明快です。(国営なるもコマーシャルあり。放映料はかなり高いそうです。)歯磨きの広告であれば、歯ブラシを口の横に立て、白い歯を見せながらニッコリ笑った絵。薬であれば、むずかって泣いている子がたちまちいい子になってお母さんに抱かれる絵。ハエやゴキブリがころりとひっくり返る絵などなど…。「明るーいナショナール、明るーいナショナール、みんなみんな、電器はナッショーナールー!」とか「キンカンぬってぇ、またぬってぇー!」とか「カステラ1番、電話は2番、3時のおやつはブンメイドー!」を彷彿とさせるに十分です。要するに言葉が分からなくても商品名ばかりはぴたりと分かる、実に素直で楽なコマーシャルなのであります。