戦没者慰霊碑

 

194592日、ホーチミン大統領がベトナム国民と全世界に向けて独立宣言を行ったバーディン広場。その西端にホーチミン廟が、そして東端に廟と相対する形で戦没者慰霊碑Dai Tuong Niem Cac Anh Hung, Liet Si 英雄烈士想念台)があります。碑の正面はタンロン(Thang Long 昇龍:ハノイの古称)の王城を向いており、ここは正にベトナムの政治、歴史、文化の中心と言える場所です。

 

ベトナムでは19世紀後半以降、フランスからの独立を勝ち取る闘いや、南北に分かれた国土統一のためのアメリカとの戦争が近年まで続きました。その中で数多くの兵士、市民が倒れ、あるいは自ら犠牲となり、全国各地に慰霊碑が建てられています。ここの戦没者慰霊碑の前壁には「代々にわたり英雄、烈士の功績と恩義を想う」「水を飲む者は井戸を掘った人を忘れてはならない」との文言が記されています。

 

 

碑は、それまで数多くの慰霊碑建設を行ってきた建築家レ・ヒエップの設計によるもので、蓮池や樹木、花壇などを含め、敷地面積は12,000㎡。その中に高さ12.6mの鉄筋コンクリート製四角柱が建てられています。外壁は大理石、四つの各面から内側に向かって金色の家が波打つように彫り込まれています。19934月に着工し、ディエンビエンフー戦勝40周年の945月に完成しました。決して壮大ではなく、むしろ簡素な造り。だれの名前も記されていないところが却って無名の英雄、烈士への尊崇の念を表しているように感じます。

 

一般には慰霊碑に近づくことはできず、鉄柵の外から見られるだけです。中へ入ろうとした私たちは衛兵に制せられてしまいました。写真も外からしか撮れません。

 

毎年727日の傷病兵・烈士記念日には国家の代表者がここを訪れ、献花します。また、外国政府の要人もここに慰霊の誠を捧げます。小泉首相、安倍首相らの献花の様子もニュースで報じられました。 

 

ところで、この戦没者慰霊碑やアメリカ・ワシントンのアーリントン国立墓地のように、その国民は勿論、外国要人が(例え敵側の施設であっても)静かに戦没者を追悼できる施設は戦禍に倒れた人々を偲び、平和を考えるうえで大切な場所だと思います。日本の場合、先祖のお墓や村々の忠魂碑はあっても、全国民的な施設はあるのでしょうか。毎夏、靖国神社に時の首相が参拝するとかしないとか。国内外のやいのやいの…。これでは参拝者だけでなく、祀られている諸霊自身が心穏やかでないのではないでしょうか。