イオン・ハノイ店
先日、イオン・ハノイ店に行ってきました。イオンは海外進出にも積極的で中国、アセアンにいくつもの店を構えています。ベトナムではハノイ、ホーチミン、フエを含む各地に8店舗を展開しているそうです。
我家の近くにもスーパーは何軒かあります。しかし、当然ながら食材はローカル中心で、私たちが手にするのは基本的な肉、野菜に限られ、例えばミョウガとかシソとかの微妙な味はない。あるいはサクランボとかイチゴとかの愛らしい果物はない。あることはあるが、アメリカ産だの中国産だのの乱暴な味と見てくれ。レストランだって和洋中韓そろっています。しかし、値段ばかりは一人前だが、味も店作りもイマイチ。そんなわけで、最近はどうも食に対して考えるのさえ面倒くさくなってきました。これではいかん、うまいもの、日本の味を探そうというわけで、イオン行きを思いついたのです。
ハノイの西側にある我家からソンホン(Song Hong 紅河)を越えた東側へ。ありがたいことに家の近くから無料送迎バスが走っています。このバス、店の案内によると止まる場所は決まっているそうですが、実際は道路脇で客が手を上げれば、適当に積み込んでくれます。ありがたい、ありがたい。これを利用して市の中心を抜けること約40分…。ありました、でっかいの!ちょっと町はずれ。ハイフォンへ向かう高速道路のほど近くに。とにかく大きい。地上4階建て、総合スーパーを中心にファッション、コスメ、服飾雑貨などの専門店180店舗に加え、カフェ、レストラン、シネマコンプレックス、フィットネスクラブも。敷地面積10万平米といいますから東京ドーム2個分。まあ、日本国内と全く同じ構えの店を持ってきたわけです。
巨大な建物の向かって右側が専門店などのショッピングモール。左端がスーパーとしての総合店舗になっています。スーパー内は日本では当たり前の棚ぞろえ、品ぞろえですが、ローカルスーパーになじんでいる私たちにとって目を見張るのは、第一に一つの品物の種類が多いこと。例えば調味料、例えば菓子、例えば飲料。これっきゃないという店とチョイスがふんだんというのでは、確かに豊かさの気分が違います。第二に生鮮食品、とりわけ魚介類の扱いの清潔なこと。
私たちは限られた予算でのお買い物。チューブ入りのしょうが、からし、わさび。きな粉にパン粉に天ぷら粉、そしてどら焼き。「うまいもの、日本の味を探そう」の意気込みにしてはかなりつましいですが…。
さて、スーパーの隣にフードコートがあって、ローカルフードやフライドチキン、ハンバーガーの類は勿論、すし、てんぷら、ホカ弁も。私たちは9万9千ドン(500円)のすしセットを買いました。まあ、味はともかく…。そのフードコート、20人ほども座れる細長いテーブルが2列にポンポンと置いてあります。全部で10島ぐらいか。昼時とあってずいぶん混んでいます。普通、食堂は汚い。いや、食堂はそんなに汚くない。客が汚くするんだ!その対策としてか、さすがにイオンさん、日本並みのきれいな環境を維持しようとしているんですね。島と島の間を掃除婦さんがのべつ幕なし清掃に回っているんです。本当にのべつ幕なし。ですからいやが応でも掃除婦さんが目に入る。
ところがです。私に言わせれば、ごみの掃除婦さん自身がごみになってる。ひっかしがった灰茶色のスカーフ、だぶだぶで灰茶色の上っ張り、てれんてれんした灰茶色のキャロット…。その格好で箒と塵取りを手にあまりきびきびともせず、のべつ幕なし。後でフードコートを出て外で休んでいた時、近くを通りかかった掃除婦さんに聞いたんです。「その制服、好きですか?」「私のシャツが汚れませんから。」「じゃあ、シャツを洗えばいいじゃない。その制服、好きですか?」「会社の支給ですから、着なくてはなりません。」なかなか、嫌だとはいいませんが、顔を見れば楽しそうでないことは読める。
昔、私が建設会社に勤めていた時、こんなことがありました。土建屋の現場服と言えば、まあ泥や埃にまみれるのですから、灰色か茶色が相場。我社のは黄土色で菜っ葉服と呼んでいました。で、時の社長の思いつきだか、だれか感覚の優れた社員の入れ知恵だか、その菜っ葉服を替えようとなったんです。コンセプトは「そのままデートに行ける現場服」。何を隠そう、森英恵さんにデザインを委嘱。マリンブルー地でちょっとミリタリールックのブルゾンができあがりました。私はそのころ本社勤務でしたから現場服はもらえなかったが、まあまあデートに行ける出来栄えでしたね。
ところで皆さんご存知、東京駅の新幹線清掃会社。ゴミ出し、清掃、椅子の方向変え、座席カバーの取り替え、忘れ物の処理まで…。折り返し列車の停車時間12分中の7分間ですべてを終え、最後は出発する列車の乗客に深々とお辞儀。何でも、やる気を引き出す社員教育の成果ということで、ハーバード大学ビジネススクールの必修科目に取り入れられているというから驚きです。清掃と言えば扱うのはゴミ・クズ。従業員の士気は上がらず、客の苦情も多いこと甚だしい。それをJR東から送り込まれた経営企画部長が制服をレストラン風の明るいデザインに変え、また「夏はアロハシャツに」「帽子に花飾りを」など社員の声にも応じて職場の雰囲気を一新したそうです。
言わずもがな、イオンの掃除婦さんも明るいピンクかオレンジの制服にしたらどうだ。きっと微笑みがこぼれるだろう。そればかりじゃあない。ハノイバスの乗務員もだぼだぼドブネズミルックから、しゃきっとした水色の制服にでもしたらどうだ。乗務員同士のおしゃべりと大笑いが減るだろう。うんんん?これはハノイばかりじゃない!我が日本だって…、いや、妻に諭されてばかりのこの私だって…(自省)。